パラグアイ、日本よりも日本な村(後編)

 

 

こちら、〈前編〉に続く〈後編〉です。まだの方は、先に〈前編〉をご覧になってください。

 

さてさて、南米のパラグアイ。イグアスの滝で不意にkissして、怒られたけど水に流してくれた優しい彼女とは、あっさりとここでお別れです。その理由を説明すると長くなりますので、簡略で語りますと、彼女は北西(ペルーやボリビア)から東へ抜けるルートで、次の目的地がブラジルだったのに対し、僕は南東(アルゼンチンやウルグアイ)からボリビア方面に向かっていたのです。

要は互いの旅の交差地点で、恋に落ちたわけで。僕もブラジルは未踏(イグアスの滝を除いて)でしたので、東に進路変更して一緒に道連れてもよかったのですが。ブラジル入国には、日本人はビザ(許可証)が必要なんですよ。ビザ取得の手続きは正直面倒だし、やはりボリビアとか行きたいしで、彼女とは話し合いの末に“悲しいけれど、ここでお別れね”という結論に至りました。短い、短い、恋だった・・・。まぁ、旅先での恋愛なんて、そんなもんです。例えばバンコクの空港で出会っていずれ結婚に至るなんてのは、とても珍しいことです(笑)。

 

ここで、不思議に思った方がいるかもしれません。というか気付いた方は、かなりの旅慣れテーラーです。僕は、ブラジルにはビザ取得が面倒だから行かなかった。しかしイグアスの滝のブラジル・サイドには何度か行っている。これは矛盾していますよね。実は、イグアス国立公園には特別なルールが有り、ここだけはビザ無しでも入れるのです。パスポートには“1day入国スタンプ”を押されます。公園はきっちり管理&警備されているので、そこから抜け出して不法入国、なんてこともできない環境です。

なので、たった三週の間に何度もイグアスの滝を訪問した僕のパスポートは、パラグアイ入国×6・出国×5、アルゼンチン入国×3・出国×4、ブラジル入国(1day)×2、出国×2・・・という、計22個ものスタンプがアホみたいに押されまくりの“春のスタンプ祭り”状態になってしまったわけです!!

 

彼女と別れ「この村での滞在もそろそろ潮時かな・・。だってオイラは“旅”に恋してるんだぜ・・・フッ」となった僕は、ついに旅の再開を決意します。首都アスンシオンに移動し、数日過ごした後は、直接ボリビアに東→西で向かうのではなく、一度アルゼンチンに再入国し、サルタという街に寄って、南→北でのボリビア入国のルートを決断。これはたしか、黄熱病の予防接種(ボリビア入国には必須)をできるところが、アスンシオンでは見つからなかったからです。

よって僕は、アスンシオン発サルタ行きの長距離バスに乗りましたが・・・。パラグアイ出国のイミグレ(出入国管理局)で、なかなかキツめのトラブル発生!

 

僕のパスポートを開いた審査官が、なにやらザワつき始めまして、僕は別室に連れて行かれ、そして、こう言われました。

「君は、この一ヶ月以内にパラグアイ・アルゼンチン・ブラジル間をありえない数、行き来している」「・・お前、ヤクの売人だな? 荷物を全部出せ。全て見させてもらう!」と。

おいおいおいおいお〜い!! ッんなわけないだろ!!!「いいよ、見てみろよ!!」というわけで了承すると、パンツ一丁まで身ぐるみ剥がされ、バックパックの中身を全て出され生地の裏側まで入念チェック!! ドラッグなんぞ当然出て来ないですし、僕はその間ずっと「だから俺はイグアスの滝マニアで、ひたすら通い続けてたんだって!」というアホな訴えを続けましたが、連中は全く聞く耳持たず。

かなりの長い間、探しまくられましたが、ようやく相手は諦めまして。これでやっと開放されるのかと思いきや、なんと「わかった。ドラッグを“今は”持っていないことは認める。しかし出国は認めない!」と。そしてこう言われました。

「100ドル払えば出させてやる」

 

僕はさすがに「ハァ!? なんだそりゃ! ふざけんな!!」とブチ切れ。「払うわけねーだろが! バカかアンタは!!」と完全にケンカモードのスイッチon。僕は、こういう方面のメンタルは確実に強いのです。向こうは完全に僕を舐めており、審査官という優位な立場だからこそのこの傍若無人ぶりだな、ということで僕も頭をフル回転で対応。

「では、日本大使館に電話するわ。 俺にはその権利がある。大使館員に事の顛末を全て伝え、日本政府からパラグアイ政府に正式に抗議してもらうよ」とのブラフをかますと、相手は明らかに怯みまして。そして「大使館に電話!? それはやめてくれ! ・・・わかった、80ドルでどうだ?」と! 公式なペナルティならば、勝手に値下げなんか出来ないだろうが!! これは要するに賄賂で、お前らは自分の懐に入れたいだけだろ!! と完全に理解し。僕としては、ここからはもはやギャグ。内心ではもう、笑っちゃっていました。

その後も「いいえ、正式に抗議します」「じゃあ60ドル!」「一銭も払う気はないって。大使館に連絡するよ」「よぉし、ならば50ドルで!」と、なんだかシュールな展開に・・・。しかしこの不毛でバカバカしいやりとりには、けっこうな時間を費やし、気が付けばバスがイミグレに到着してから2時間近くが経過している。

相手は意地でも無料にはしたくないようで、僕が「バスを待たせ過ぎて申しわけないな・・・」の思いで心がいっぱいになった頃には「10ドル!」でした(笑)ので、僕もいい加減に諦めて「いいよ、それくらい払ってやるよボケッ!!!」となり紙幣を投げつけ、出国スタンプをゲット。そのままアルゼンチン入国の手続きのために隣りの部屋に進んだところ、僕らのやりとりは入国審査官たちにも聞こえていたようで、大爆笑でのお出迎え。「あいつらって、ほんとクソだよな〜」的なことを言っていましたが、だったら助けに来てくれっての(国をまたぐので、ムリなのは承知していますが)!!

 

その後、僕がバスに戻ると2時間も待たされた他の乗客たちからの、冷たぁ〜い視線が・・・(涙)。そしてバスが出発し、僕がなんとなく手持ちのポーチバッグの中を見ると、あれ? アクセサリー類が全部ない・・・。おいおい、イミグレの連中よぉ、荷物チェックの際にすでに俺の私物をパクってんじゃねぇかよ。その上で賄賂の要求かよ。ハァ・・・。

 

というわけで、“南米ってこんな面白いところダヨォ〜!”という話でした(笑)!! 今となっては、すっかりいい思い出ですけどね。もちろん、上記のイミグレ職員は全員、国が雇っている正式な公務員ですよ! 公務員ですらこんなレベルなのですから、南米では窃盗、強盗、誘拐、等々いつでも起こりうると思った方がいいです。何事もスケールが大きく、想像を超える強烈インパクトな出来事が続き、冒険のステージとしてはサイコーなのですが。この、常に油断ならないヒリヒリとした緊張感は、なかなかキツいです。

 

タランチュラは普通にいるし! アリも超デカいし!!

 

パラグアイの、のどかな村の話題だったのがいつ間にか、南米ってほんとムチャクチャだぜ〜という話になってしまいました!

ではでは、また!!

次は、スペインの話にしようかな!!

 

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