観光ビジネスほど、顧客の数が安定しない業種はないと思います。顧客が多い時期と、少ない時期、そこには凄まじいまでの極端な差があります。
近年では、「ホテル不足が深刻」という話を、テレビやネットで見る機会が増えました。しかし宿が不足するのはまさに、“混む時期”に限った話です。「いつも満員だ!」といった発信をしている方は、自身が“混む時期”にのみ旅行をし、それが通年の状況であると勘違いしているのでしょう。“混まない時期”にはどこの宿でも、皆さまが想像するよりもはるかに、空きだらけですよ。最近になってようやく、「すでに供給過多である」という、実状に近い情報をチラホラと見られるようになり、嬉しく思いますが。
私たちのゲストハウスでも、それはもちろん同じです。“混む時期”は連日の満員で大忙しですが、“混まない時期”には閑古鳥が鳴きます。「宿業というのは、一年の内の300日が赤字で、65日が黒字の商売だ」と誰かが言っておりましたが、これは言い得て妙な表現です。
そして多くの宿では、ハイシーズン料金とローシーズン料金を、分けて設定しております。というわけで今回は、「ゲストハウスに泊まるには、どの時期がお得なの?」という話をします。
結論から申しますと、一般的に宿業が一番儲からないのは、「特別な期間の“直後”」です。例えば年末年始では、1月の第一週末くらいまでは満員ですが、第二週に入った途端に、驚くほどスカスカになります。じんわり減るのではないのです。一気に、極端にゲストがいなくなるのです。その流れで「特別な期間の“直後”」の例をいくつかあげると、
4月 第三週(桜シーズンの直後)
5月 第二週(ゴールデンウィークの直後)
8月 第四週(お盆の直後)
・・・に、同じ現象が起きます。4月も5月も8月も、大きな括りだとハイシーズンですので、月全体の売り上げでいうと悪くない成績になりますが。そしてもちろんこれは、宿の立地等によっても違いがありますが。この「“直後”に予約が全然入らない!」は、多くの宿に共通する問題です。
ちなみに、日本中で新規に立ち上げられる幾多の宿泊施設が、設立の動機に「訪日観光客数が増えている」を含んでおります。しかしながら、日本国内の観光客数における日本人と外国人の割合は、現状でおおよそ6:1です。観光業界にとっての顧客数は、外国人よりも日本人の方が、6倍も多いのです。
そして残念ながら、日本人の国内観光客数はここ数年の間、ずっと減り続けております。小さいパイの増加にばかり注目して、6倍もある大きい方のパイの減少に意識が向かないのというのは、なぜなのでしょうか? 宿業の開業志望者は、訪日観光客数だけに注目するのではなく、日本人観光客数を含めた需要の全体像を、きちんと捉える必要があります。
(引用:じゃらんリサーチセンター〈2030年 観光の需要予測 研究〉)
また、外国人観光客は確かに増え続けておりますが、その“増加率”は2015年をピークに、減少傾向にあります。その一方で、クルーズ船を利用しての訪日客の数は年々、増加しています。
つまりは、“訪日観光客の全体数が少しずつ増えにくくなって来ている上に、国内の宿泊施設に泊まる率がどんどん減っている状態”なのです。これは宿泊業界にとっては当然、マイナスの傾向です。
観光業は今後も安泰だ、というトンチンカンな発信を積極的にする者は、それを言うことで何かしらの利を得ようとしているか、よっぽど無知かのどちらかです。観光業界は、外国人観光客の増加の“表面的な数字”のみに気持ちを驕らすことなく、課題をしっかりと認識し、特には日本人観光客の減少を食い止める策を、真剣に練る必要があります。
私たちの宿では外国人ゲストも多く滞在しておりますが、こちらのサイト“おかえりびと”では、日本語のみでの発信をしております。日本人の、特に若年層に対し、ゲストハウスのリアルを素直に発信し、魅力を伝え、新規の需要を開拓したいとの考えからです。皆さまが、「ゲストハウスって面白そう」・・というきっかけから、「久しぶりに旅に出てみようかな」となっていただければ、私たちは最高に幸せです。
というわけで今回は、
「極端に混む時期から予定を一週間ずらすだけで、ほとんどの宿は空いており、リーズナブルな上にゆったりできますよ!」
「なので皆さん、どんどん旅に出て、日本中にある面白いゲストハウスに泊まってみて下さいね!!」
という話でした。
日本政府さん! 国民の働き方改革は素晴らしいと思いますが、“休み方改革”の推進の方も、どうかよろしくお願いします!!