過酷すぎた・・ヒマラヤ登山。

ナマステ!
メロ ナーム イサ ホ。

こんにちは、イサです。
まずは簡単に自己紹介。

埼玉県上尾市出身。
趣味は登山、旅行、サーフィン(今はほとんどいけてない)

東京ひかりゲストハウスを家族で経営しています。
(妻:ユミコ、娘1人、息子2人)

 

今回、おかえりびとで記事を書くことになり、どこの国、どこの地域の話にしようかなと考えると、もう約30年も昔のことでもやっぱり「ネパール!!」しかないなぁと思ったので、まずはネパールの話です。

そう、趣味が登山だからネパールです。

父が山好きで小さい頃から、東京近郊のハイキング、夏休みには北アルプスなどに連れられていた影響か、気が付いたら大学でゴリゴリの山岳会に入り、岩登り、冬山、そしてヒマラヤ登山までするようになっていました。

この山岳会では、おおむね隔年で学生だけによるヒマラヤでのライトエクスペディション(比較的安価な登山許可料で登れる)を派遣していて、そんな環境のなか、いつの間にか自分もネパールヒマラヤに行きたいと強く思うようになり、仲間5人でネパールのクーンブ地方ある比較的簡単に登れそうなパルチャモ峰(6,187m)に行くことにしました。

また、この遠征をきっかけに大学を1年休学することにしました。

3月の登山活動が終わって、仲間の帰国を見送りした後も、ネパール、インド、パキスタンなどを旅行し、9月のポストモンスーンに再び、日本からの仲間1人とヒマラヤに行く計画でした。

というわけで、ここからヒマラヤ登山の話です。

 

プロローグ

 

頭が痛い。

かち割れそうだ。

呼吸が浅く、呼吸のたびに肺からゴロゴロと音が聞こえる。

高所に順応しようと水を沢山飲む為、夜中に何回もトイレに起きる。

用足しに静かにテントの外に出ると澄みきった夜空には満天の星で、目の前には絶壁がそびえている。

寝なければと思えば思うほど寝れない。

ボーとした頭で、翌朝の行動を決断した。

「下山!!」

「焦るな」

「まだ、チャンスはある」

今回のこの登山機会を逸しても、来秋のポストモンスーンシーズンの9月にはまたチャンスがあると自分に言い聞かせた。

ここは、標高約4,800m。
当然酸素が薄い。

順応がうまくできなかった私は登山を楽しむどころではなくなっていた。
今までの楽しいベースキャンプ(B.C)までのキャラバンとは打って変わり、B.Cからはひたすら頭痛と息苦しさとの闘いだった。

そう、B.Cまでの高所順応は順調だった。

首都のカトマンズから飛行機でルクラに入るルートでなく、あえてぎゅうぎゅうのバスで14時間ほどもゆられて、キャラバンの始点のジリへ。

ジリ(1,995m)から歩き始めナムチェバザール(3,440)、エベレスト街道と別れて~ターメ(3,820m)~テンポ(4,320m)~B.Cとゆっくりと10日間以上かけて高度を稼ぎながらキャラバンしてきた。

ヒマラヤ初挑戦の私たちは、高所順応も初めてだったが、

「少しずつ高度を上げる」

「寝る高度より少し上まで登り降り来る」

「水を沢山飲む」

など事前に仕入れた知識を駆使してB.Cまでは5人のメンバー皆元気だった。

同じ行程で高所順応を進めているにも関わらず、シェルパでガイドのアンカミさんは4,800mでも平地と同じように軽々と歩いている。
それは民族的にも、職業的にも高度に強いのは当然といえば当然かもしれない。

しかし、同じヒマラヤ初挑戦の学生仲間が、それほど高度に苦しめられていないようなのは、体力にはそれなりに自信があっただけに「自分は高所に弱い体質」なのかと思い愕然とした。

「より高きを目指すアルピニスト失格」の烙印を押されたようなものだ。

残念で口惜しい反面、ちょっと「ほっと?」したような複雑な気持ちだった。

日本からわざわざ持ってきた雪山用の登山靴も、アイゼンも、ピッケルも一度も使わないうちに、私のヒマラヤ初挑戦はあっけなく終わろうとしている。

下山と決めたからには、ひたすら降りるしかない。

朝、キッチンボーイのハリカが入れてくれた甘くて美味しいモーニングティーも、

気持ち悪くなり吐いてしまう。

これからC1~C2、そして頂上を目指す仲間との別れの挨拶もそこそこに、下山を開始した。

途中、鮮やかなオレンジ色の血痰を吐いた。

多分、肺水腫だ。

同じ高度にいては、恐らく死ぬ。

「死」が後ろから追いかけてくるようだ。

「早く降りなければ」

よろよろ歩いていると行きに寄った途中の村から、心配した女の子が出てきて、私の荷物を背負ってくれると言う。

行きのときはこれからの登山活動にむけて意気揚々であったのに、今は別人のように弱っていて情けない限りだが、そんなことを言っている余裕もない。素直に好意に甘えさせて頂いた。

高度が下がってくると少し楽になったような気がしてきた。

(つづく)

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